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パノラマとうきだん
パノラマ島綺譚
江戸川 乱歩
Read パノラマ島綺譚 (パノラマとうきだん) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 78,920 characters · 153 screens
お前は造園術で云うトピアリーというものを知っているだろうか。つげやサイプレスなどの常緑木を、或は幾何学的な形に、或は動物だとか天体などになぞらえて、彫刻の様に刈込むことを云うのだ。一つの景色には、そうした様々の美しいトピアリーが涯しもなく並んでいる。そこには雄大なもの、繊細なもの、あらゆる直線と曲線との交錯が、不思議なオーケストラを奏でているのだ。そして、その間々には、古来の有名な彫刻が、恐しい群を為して密集している。しかも、それが悉く本当の人間なのだ。化石した様に押し黙っている裸体の男女の一大群集なのだ。パノラマ島の旅人は、この広漠たる原野から突然そこへ這入って、見渡す限り打続く人間と植物との不自然なる彫刻群に接し、むせ返る様な生命力の圧迫を感じるだろう。そして、そこに名状の出来ない怪奇な美しさを見出すのだ。
又一つの世界には生命のない鉄製の機械ばかりが密集している。絶えまもなくビンビンと廻転する黒怪物の群なのだ。その原動力は島の地下で起している電気によるのだけれど、そこに並んでいるものは、蒸汽機関だとか、電動機だとか、そういうありふれたものではなくて、ある種の夢に現れて来る様な、不可思議なる機械力の象徴なのだ。