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パノラマとうきだん
パノラマ島綺譚
江戸川 乱歩
Read パノラマ島綺譚 (パノラマとうきだん) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 78,920 characters · 153 screens
彼はその翌日、下宿屋の帳場へは、思う仔細があって、一時宿を引払って旅に出る、行く先とては定まらぬ、謂わば放浪の旅だけれど、最初は伊豆半島の南の方へ志す積りだと告げ、小さな行李一つを携えて出発しました。そして、途中で、必要の品物を買い、人通りのない道ばたで、今云った変装を終ると、まっすぐに東京駅へかけつけ、行李は一時預けにして、T市の二つ三つ先の駅までの切符を買うと、彼は三等車の人ごみの中へともぐり込むのでありました。
T市に到着した彼は、それから足かけ二日、正しく云えば満一昼夜の間、彼の独得の方法によって、実に機敏に歩き廻り聞き廻って、結局目的を果すことが出来ました。その詳細は、あまり管々しくなりますから、茲には省くことに致しますが、兎も角、調査の結果は、彼の計画が決して不可能事でないことを明かにしたのでありました。
そうして、彼が再び東京駅へ立帰ったのは、例の新聞記者の話を聞いた日から三日目、菰田源三郎の葬儀が行われた日から六日目の夜、八時に近い時分でした。彼の考えでは遅くとも源三郎の死後十日以内には、彼を蘇生させる積りなのですから、余す所四日間、実に大多忙と云わねばなりません、彼は先ず一時預けの小行李を受取ってから、駅の便所に入って例の変装をとりはずし、元の人見廣介に戻ると、その足で霊岸島の汽船発着