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ピストルのつかいかた
ピストルの使い方
泉 鏡花
Read ピストルの使い方 (ピストルのつかいかた) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 39,100 characters · 78 screens
自から竜胆の花は高く揺れた。
声は届かない。念は通じた。が、言は伝らないから、婦は外套を預ったまま、向直って衝と去った。
多津吉は一人、塚を前にして、松蔭に居たのである。
「私も貴方に逢いに来たの。」
「嘘を吐け。」
「あら、ほんとだわ。」
帽子をよけて、幹に立った、振袖は肩ずれに、島田髷は男よりやや高い。
「連の人は?」
「松露を捜して、谷の中へ分れて下りたの。……私はお精進の女で、殺生には向かないんですって。……魚でも、茸でも、いきもの……」
と言いかけて、ちょっと背きながら、お転婆に笑った。
「あら、可厭だ。――知らないわ。」
「何をさ。」
「いいえ、いきものをね、分って?……取るのは、うまれつき拙なんですって。ですから松露を捜す気もなかった処へ、火事だって騒ぎでしょう。煙が見えたわ。あの丘へ駆上ると、もう、その煙は私の立った背より低くなって、火も見えないで消えたんですもの。小火なんですね。」
「いや、悪戯だよ。」
「まあ、放火。」
「違うよ。……魔の火と云ってね、この山の天狗が、人を驚かす悪戯だそうだ。」
「そう、面白いわね。」
諸国を渡る門づけの振袖は、あえて天狗に怯えない。