Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ぺんくらぶとげいじゅついん
ペンクラブと芸術院
正宗 白鳥
Read ペンクラブと芸術院 (ぺんくらぶとげいじゅついん) by 正宗 白鳥 (まさむねはくちょう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 4,444 characters · 9 screens
そのためにペンクラブのその時の歴史が綺麗であったのである。誰もそんな事に気がつかないだろうし、私自身もそんな事を考えてもいなかったが、今考えると、一つの人世光景がほがらかに思浮ぶのである。傍観的であり無気力であった私は、ペンクラブ会長として何もしなかった。しかし、戦争末期の世相混乱、自暴自棄的の苛烈な騒ぎの間に、それに捲き込まれないで、何もしなかったという事は、何かやっていたよりも、却って人生妙味があったのではないか。文学報国会や言論報国会などでは、盛んに時局に活躍して、軍部の態度に迎合し、情報局の支配に隷属し、情報局の奥村某の一顰一笑を気にしていたのであったが、私の会長であった頃のペンクラブは、軍部や情報局の思惑は全く無視していた。八紘一宇や国体明徴運動なんかに加入しなかった。若し働き手の有力な会長がいたなら、ペンクラブももっと花々しい存在になっていたのであろうが、その花々しさは、軍部や情報局の意向に従った上の花々しさであったにちがいない。それで、何もしなかった私は、ペンクラブを影の薄いものとしたにしても、それを泥土で汚させなかった。
このクラブの事務をやっていた鈴木某という青年は、殆ど無報酬で煩わしい雑務を運転していたが、私同様に積極的に、目に立つような事をやろうとはしなかった。