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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
Read ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) by 梅崎 春生 (うめざきはるお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 129,411 characters · 263 screens
そういえば発田の身のこなしには、植民地にいたらしい臭いと、また視学という中途半端な権力者の臭いが、どことなく残っていた。銃眼みたいな小さい眼は、不必要な人間をしりぞける、とがめるような光を含んでいた。かたくなな自尊心が、そこにひらめいていた。この界隈では、発田はつき合いの悪い人間にちがいなかった。そして発田夫妻は、意識的に自分等のまわりに垣をめぐらして、孤立して生活したがっているようにも見えた。
現在の発田の職業を、彼は知らなかった。近所の者も誰も知らないようであった。もちろん彼はそれを知りたいという興味は、全然持たなかった。
しかし二三日前、彼は偶然に発田の商売を知った。
ある用件の帰途で、彼はある街をあるいていた。時刻は夕方であった。場末の盛り場みたいな狭い道で、片側に露店がずらずらと並んでいた。往きかう人々に混って、彼は黄色い現象のように、だるい足を引きずっていた。やはりひどく体が重かったし、それに咽喉も乾いていた。冬に入る前触れで、空気がからからに乾燥していた。なにか飲物を売る店を物色しながら、彼は駅の方向に力なく歩いていた。
片側の露店は、半町ほどつづいていた。