Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

ボロやのしゅんじゅう

ボロ家の春秋

梅崎 春生

Read ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) by 梅崎 春生 (うめざきはるお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 129,411 characters · 263 screens

Aozora Bunko

男の裸の頸は蒼白く粟が立っていた。僕の方に身体をすり寄せて来た。今度は男の体が小刻みに動いていた。僕が聞いた。

「今日何処で飲んだのだね」

「何処ってあそこだよ」男は遠くを見るような目になり、「今日は会社の解散式よ。潰れたんだ。さばさばしたよ。明日から俺一人だ。で、お前は何で粕取など飲んだんだ」

「俺は退屈だからよ」と僕は答えた。

「退屈だとお前は飲むのか」と男が聞き返した。

「そうだよ」

「何故退屈するんだ」

「偽者ばかりが世の中にいるからだよ」と僕は答えた。「俺はにせものを見ていることが退屈なんだ。だから酔いたいのだ。酔いだけは偽りないからな。酔ってる間だけは退屈しないよ。お前もどういう積りで外套をくれたのか知らないが、お前も相当な偽者らしいな全く」

それからはっきり覚えていないが、駅に降りて彼と別れたような気がする。翌朝眼が覚めたら外套はちゃんと枕もとにあった。たいへん寒い朝で、昨夜脱ぎ捨てた靴下がごわごわに凍っていた。昨夜の男はどうしただろうと考えたら直ぐ、鶏の皮のように粟立った男の頸のことが頭に来た。僕は部屋の中で外套を着てみた。誠に着具合の良い外套である。