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ウィタ・セクスアリス
ヰタ・セクスアリス
Read ヰタ・セクスアリス (ウィタ・セクスアリス) by Mori Ōgai (森 鴎外) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 58,941 characters · 119 screens
湯屋には硬派だって行くことがないではないが、行っても二階へは登らない。軟派は二階を当にして行く。二階には必ず女がいた。その頃の書生には、こういう湯屋の女と夫婦約束をした人もあった。下宿屋の娘なんぞよりは、無論一層下った貨物なのである。
僕は硬派の犠牲であった。何故というのに、その頃の寄宿舎の中では、僕と埴生庄之助という生徒とが一番年が若かった。埴生は江戸の目医者の子である。色が白い。目がぱっちりしていて、唇は朱を点じたようである。体はしなやかである。僕は色が黒くて、体が武骨で、その上田舎育である。それであるのに、意外にも硬派は埴生を附け廻さずに、僕を附け廻す。僕の想像では、埴生は生れながらの軟派であるので免れるのだと思っていたのである。
学校に這入ったのは一月である。寄宿舎では二階の部屋を割り当てられた。同室は鰐口弦という男である。この男は晩学の方であって、級中で最年長者の一人であった。白菊石の顔が長くて、前にしゃくれた腮が尖っている。痩せていて背が高い。若しこの男が硬派であったら、僕は到底免れないのであったかと思う。
幸に鰐口は硬派ではなかった。