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せんきゅうひゃくにじゅうさんねんなつ

一九二三年夏

宮本 百合子

Read 一九二三年夏 (せんきゅうひゃくにじゅうさんねんなつ) by 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 7,898 characters · 16 screens

Aozora Bunko

始めそんなに正しいのを持ったよろこび。やがて不安。

その心持は短篇にまとまる。

○時計で南北を知るには、直射光線にうつる短針のかげをかさね、十二時とそれとの中央を南とし、正反対を北。

○列車の速力は、二十二秒半にこすレールのつぎめの数が時数。

ドイツに Wanderlied の多いこと Faust でさえ、一種のヴァンデルリードではないか。

ドイツ人の心持。

イギリス人にない。

日本人は?

六月二十三日

梅雨のはれ間、激しい西北の風とともに空はすっかり霽れ上った。

庭に出、空を仰ぐと、深い一片の雲もない天に、月と星とが、小さく、はっきり見える。中天に昇って居る故か月は、不思議に小さく近く見えた。何か見えない糸で天から吊るされ、激しい風が吹き渡る毎に、吊下げられた星や月も揺れまたたくように思える。

又他の風景。

七八月のような大暴風雨の後、梅雨がすっかりはれ上った。柔い若葉をつけたばかりの梧桐はかぜにもまれ、雨にたたかれた揚句、いきなりかっと照る暑い太陽にむされ、すっかりぐったりしおれたようになって、澄んだ空の前に立って居る。

六月の樹木と思えない程どす黒く汚く見えた。