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ちょいとあやし
一寸怪
泉 鏡花
Read 一寸怪 (ちょいとあやし) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 3,256 characters · 7 screens
就中、恐ろしかったというのは、或晩多勢の人が来て、雨落ちの傍の大きな水瓶へ種々な物品を入れて、その上に多勢かかって、大石を持って来て乗せておいて、最早これなら、奴も動かせまいと云っていると、その言葉の切れぬ内に、グワラリと、非常な響をして、その石を水瓶から、外へ落したので、皆が顔色を変えたと云う事。一時などは椽側に何だか解らぬが動物の足跡が付いているが、それなんぞしらべて丁度障子の一小間の間を出入するほどな動物だろうという事だけは推測出来たが、誰しも、遂にその姿を発見したものはない。終には洋燈を戸棚へ入れるというような、危険千万な事になったので、転居をするような仕末、一時は非常な評判になって、家の前は、見物の群集で雑沓して、売物店まで出たとの事。
これと似た談が房州にもある、何でも白浜の近方だったが、農夫以前の話とおなじような事がはじまった、家が、丁度、谷間のようなところにあるので、その両方の山の上に、猟夫を頼んで見張をしたが、何も見えないが、奇妙に夜に入るとただ猟夫がつれている、犬ばかりには見えるものか、非常に吠えて廻ったとの事、この家に一人、子守娘が居て、その娘は、何だか変な動物が時々来るよといっておったそうである。