Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
いっすんぼうし
一寸法師
江戸川 乱歩
Read 一寸法師 (いっすんぼうし) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 96,475 characters · 194 screens
紋三は濡れたハンカチを片手にボンヤリとその美しい姿を眺めた。昨日までは愛すればこそ、一種の恐れをさえ抱いていたこの人と、今駈落をしているのだと思うと、悲壮な様な、甘い様な、名状出来ない感じで胸が痛くなった。
彼はそこに膝をついて、百合枝の首を抱き上げると、彼女の脣へ、濡れたハンカチの代りに、いきなり自分の脣を持って行った。そして、彼がまだ小さい子供だった時分、隣に眠っていた従妹にした様に、彼女の接吻を盗むのだった。
「アラ、私どうしたのでしょう」
やがて、接吻の雨の下から、百合枝の脣がいった。
彼の余りの激情が彼女の眠りをさましたのか、それとも彼女は凡てを知っていて、態と今気のついた体を装っているのか、紋三は疑わないではいられなかった。それ程百合枝のさめ方は不自然で、それにさめたあとでも、彼女の首をまいた紋三の腕を拒もうともしないのが変だった。満更気のせいばかりでないと思うと、紋三は目の中が熱くなった。
「どうです、歩けますか」彼はさっきのハンカチを百合枝の口に当てがって「もう少しの我慢です。この辺を右に折れて行けば、曳舟の停車場があるはずです。そこから汽車にのりましょう。