Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

さんしろう

三四郎

夏目 漱石

Read 三四郎 (さんしろう) by Natsume Sōseki (夏目 漱石) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 169,765 characters · 343 screens

Aozora Bunko

女はなかば歩をめぐらしかけた。相変らず低い下駄をはいている。男はわざと会堂の垣に身を寄せた。

「ここでお目にかかればそれでよい。さっきから、あなたの出て来るのを待っていた」

「おはいりになればよいのに。寒かったでしょう」

「寒かった」

「お風邪はもうよいの。大事になさらないと、ぶり返しますよ。まだ顔色がよくないようね」

男は返事をしずに、外套の隠袋から半紙に包んだものを出した。

「拝借した金です。ながながありがとう。返そう返そうと思って、ついおそくなった」

美禰子はちょっと三四郎の顔を見たが、そのまま逆らわずに、紙包みを受け取った。しかし手に持ったなり、しまわずにながめている。三四郎もそれをながめている。言葉が少しのあいだ切れた。やがて、美禰子が言った。

「あなた、御不自由じゃなくって」

「いいえ、このあいだからそのつもりで国から取り寄せておいたのだから、どうか取ってください」

「そう。じゃいただいておきましょう」

女は紙包みを懐へ入れた。その手を吾妻コートから出した時、白いハンケチを持っていた。鼻のところへあてて、三四郎を見ている。ハンケチをかぐ様子でもある。