Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

ふざいじぬし

不在地主

小林 多喜二

Read 不在地主 (ふざいじぬし) by 小林 多喜二 (こばやしたきじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 69,990 characters · 141 screens

Aozora Bunko

「七ちゃ、小樽行きまだか。」

「ん、もうだ。」

「もうか?」

又、七之助とも離れてしまわなければならないか、と思うと、健は淋しかった。――健の好きなキヌも札幌へ出て行っていた。製麻会社の女工に募集されて行ったのだった。然し、それが一年しないうちに、バアの女給をしているという噂になって、健の耳に戻ってきた。

……話が途切れると、泥濘を歩く足音だけが耳についた。田の水面が、暗い硝子板のように光ってみえた。

七之助はとりとめなく、色々な歌の端だけを、口笛で吹きながら歩いていた。七之助も何か考え事をしている。

「三吾の田、出が悪いな。」――七之助が蹲んで、茎をむしった。

「三吾も不幸ばかりだものよ。」

――三吾が自分のでもない泥炭地の田を、どうにか当り前にしようと、無理に、体を使った。そして二度「村役場」と「道庁」から表彰された。「農夫として、その勤強力行は範とするに足る」と云われた。岸野が道庁へ表彰方を申請したのだった。

その額椽を、天井裏のない煤けた家の中に掛けた日から、二タ月もしないうちに、三吾は寝がえりも出来ない程の神経痛にかかってしまった。痛みは寝ると夜明け迄続いた。