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ちゅうごくかいきしょうせつしゅう
中国怪奇小説集
岡本 綺堂
Read 中国怪奇小説集 (ちゅうごくかいきしょうせつしゅう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 179,458 characters · 363 screens
張天師は壇に登って法をおこなうと、果たして長さ数丈ともいうべき大きい黒魚が、正体をあらわして壇の前にひれ伏した。
「なんじの罪は斬に当る」と、天師はおごそかに言い渡した。「しかし知県に化けているあいだにすこぶる善政をおこなっているから、特になんじの死をゆるしてやるぞ」
天師は大きい甕のなかにかの魚を押し籠めて、神符をもってその口を封じ、県衙の土中に埋めてしまった。
そのときに、魚は甕のなかからしきりに哀れみを乞うと、天師はまた言い渡した。
「今は赦されぬ。おれが再びここを通るときに放してやる」
張天師はその後ふたたび帰安県を通らなかった。
狗熊
清の乾隆二十六年のことである。虎に乞食があって一頭の狗熊を養っていた。熊の大きさは川馬のごとくで、箭のような毛が森立している。
この熊の不思議は、物をいうことこそ出来ないが、筆を執って能く字をかき、よく詩を作るのである。往来の人が一銭をあたえれば、飼いぬしの乞食がその熊を見せてくれる。さらに百銭をあたえて白紙をわたせば、飼い主は彼に命じて唐詩一首を書かせてくれる。まことに不思議の芸であった。
ある日、飼い主が外出して、獣だけ独り残っているところへ、ある人が行って例のごとくに一枚の紙をあたえると、熊は詩を書かないで、思いも寄らないことを書いた。