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ちゅうごくかいきしょうせつしゅう
中国怪奇小説集
岡本 綺堂
Read 中国怪奇小説集 (ちゅうごくかいきしょうせつしゅう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 179,458 characters · 363 screens
続いて三発、四発、いずれも手堪えはありながら、相手はちっとも怯まない。そのうちに、矢種は残らず射尽くしてしまったので、彼も今更おそろしくなって、馬を早めて逃げ出すと、やがて又、激しい風が吹き起り、雷もすさまじく鳴りはためいて来たので、韋は馬を飛び降りて大樹の下に逃げ込んだ。
見れば、空中には電光が飛び違って、さながら鞠を撃つ杖のようである。それが次第に舞い下がって、大樹の上にひらめきかかると、何物かが木の葉のようにばらばらと降って来た。木の葉ではなく板の札である。それが忽ちに地に積もって、韋の膝を埋めるほどに高くなったので、彼はいよいよ驚き恐れた。
「どうぞ助けてください」
彼は弓矢をなげ捨てて、空にむかって拝すること数十回に及ぶと、電光はようやく遠ざかって、風も雷もまたやんだ。まずほっとして見まわすと、大樹の枝も幹も折れているばかりか、自分の馬も荷物もどこへか消え失せてしまったのである。
こうなると、もう進んでゆく勇気はないので、早々にもと来た道を引っ返したが、今度は徒あるきであるから捗どらず、元の宿まで帰り着いた頃には夜が明けて、かの老人は店さきで桶の箍をはめていた。