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『ケプロン・くろだのこうそう』について
中谷宇吉郎集 第八巻
中谷 宇吉郎
Read 中谷宇吉郎集 第八巻 (『ケプロン・くろだのこうそう』について) by 中谷 宇吉郎 (なかやうきちろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 85,890 characters · 178 screens
唯一の方法は、実験者を、自由落下の状態にしておくことである。自由に空中を落下している間は、そのものには、重力が感ぜられない。エレヴェーターが降り始める時に、スーッと背筋をみょうなものがはしるような感じになるが、あれが重力が弱くなった時の感じである。
それならエレヴェーターの中で実験をしてみたらよい、と思われるかもしれないが、あれでは時間が短かすぎる。エレヴェーターでゾーッとするのは、降り始める瞬間だけで、あとすぐああいう感じはなくなる。自由落下の場合は、速度がどんどん増していくのであるが、エレヴェーターでは、すぐ一定速度になってしまう。速度が一定になれば、それは力学的には動いていないのと同じことで、重力は普通どおりに感ぜられる。普通のエレヴェーターで、重力が弱くなって感ぜられるのは、降り始めの瞬間だけである。それでエレヴェーターの綱が切れて、箱が自由落下をする場合でないと、今の目的にはかなわない。
それでは綱を切って、落してやれば良いわけであるが、厄介なことには、自由落下の速度は非常に大きく、百メートル落ちるのに、五秒もかからない。それで何十階のビルディングの上から落してやっても、せいぜい五秒か十秒程度しか実験ができない。