Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
Read 丹下左膳 (たんげさぜん) by 林 不忘 (はやしふぼう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 340,187 characters · 666 screens
とお藤がひとり言を洩らした時!
「これ! 女ひとりか。この夜更けにどこへ参る?」
という太い声が前面からドキリとお藤の胸をうった。
「は。いえ、あの、わたしはそこの長屋の女でございますが、ただいま夜中に急病人がでまして――」
「医者を迎えに行くというのか」
「はい」
「よし。気をつけてゆけ」
「有難うございます」
で、二、三歩歩きかけた背後から!
「櫛まきお藤ッ! 神妙にお縄を頂戴いたせッ!」
と一声!
行き過ぎた捕役の手にキラリ十手が光って!
「何をッ! おふざけでないよ!」
構えたお藤、ちらちらと周囲を見ると、雨に伏さった御用の小者が、襷十字も厳重にぐるりと巻いてしめてくる。
「あめの中から金太さん……て唄はあるけれど、そうすると、ここに待っていたのかえ。ほほほほほ」
不敵にほほえみながら、懐中に隠し持った匕首、逆手に握ると見るまに、寄ってきた一人の脇腹をえぐるが早いか、櫛まきお藤は脱兎のごとく稲荷の境内に駈けこんで、祠をたてに白い腕を振りかぶった。
「御用ッ!」
「櫛まきッ! 御用ッ!」
ビュウッ! と捕縄をしごいて口々に叫びかわす役人のむれ、社前のお藤をかこんでジリジリッとつめてゆく。