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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

Read 丹下左膳 (たんげさぜん) by 林 不忘 (はやしふぼう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 340,187 characters · 666 screens

Aozora Bunko

まあ、おもしろい――けれどねえ、お艶にごひいき筋が多うござんすから、あとでどんな苦情が出るかも知れませんよ」

「…………!」

無言のうちに、しずかに鞘走らせた武蔵太郎を、栄三郎はっと振りかぶったと見るまに、泣くような気合いの声とともに、氷刃、殺風を生じて、突! 深くお艶の肩を打った。

ウウウム――!

と歯を食いしばったお艶、しなやかな胴を一瞬くねらせて、たたみを掻いてうつぶしたのだった。

が!

峰打ちだった。

と、お艶はすぐに、痛みに顔をしかめただけで起きあがろうとしたが、栄三郎はもう武蔵太郎をピタリと鞘に納めて、両手を腰に立ちはだかったまま凝然とお艶を見おろしていた。

その眼……!

おお、その眼は、人間の愛欲憎念をここにひとつに集めたような、言辞に尽きた情を宿して、あやしい光に濡れそぼれていた、泣くような――と見れば、笑うような。

暫時の沈黙のうちに、男と女の瞳が互いにその奥底の深意を読もうとあせって、はげしく絡みあい、音をたてんばかりにきしんだ。

口を開いたのは栄三郎だった。

「お艶! あれほど固く誓い、また今日というきょうまで信じきっておったお前が、かくも汚れた女子であろうとは拙者には思えぬ。