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ぼしぞう
久生十蘭短篇選
久生 十蘭
Read 久生十蘭短篇選 (ぼしぞう) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 48,344 characters · 96 screens
奥方は、毎日のように白女に文を持たしておよこしになり、また見事な手箱を保平殿へおつかわしになりました」
「もうたくさんだ」
泰文は天羽を縛って雑倉へ放りこむと、こんどは僕を吊しあげた。
「お前は保平と奥方がなにをしていたか見て知っているはずだ。天羽がそういった。お前はいったいなにをしてくれた。夜の明けるまで二人の傍にいて」
僕は知らぬ存ぜぬといっていたが、腕の関節が脱臼しかけたので、しどろもどろに叫びだした。
「なるほど、私はそういう不都合な時刻に葵ノ壺へ入りました。けれどもお二人の傍にいたわけではありません。じつはそばの局で白女と遊んでおりました」
「言わぬならもう一度吊しあげるだけのことだ」
僕は震えだした。
「もうお吊しになるには及びません。なにもかも申します」
そこへ白女が呼びこまれた。
「お前がねんごろにした女房がいる。こいつの前で、あったことをみな言ってみろ」
「申します。私はお二人の前でさる実景を演じる役をひきうけました。ここにいるこの白女という女房が、そうするように強請いたしたからです。最初に保平さまが下着をとられ、それから奥方が下紐を解かれました」