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らんぽぶんせき
乱歩分析
大下 宇陀児
Read 乱歩分析 (らんぽぶんせき) by 大下 宇陀児 (おおしたうだる) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 8,427 characters · 17 screens
私も、それらの作品が与えたイメージからして長いうちぬけきれず、従ってただ一図に彼を、芸術家肌の人間だとばかり考えていた。
ところがそれは、修正を要することだったと、迂闊といえば迂闊だったが、その時になってやっと気がついたのであった。
ずぼらどころか、彼は人一倍に丹念で刻明な気質で、人一倍に努力家で勤勉で、人一倍に几帳面で、そして人一倍に理論的な人間だったのである。
それ以来、私は別の眼で、乱歩を眺めるようになった。そしてこのずぼらとは正反対な彼の素質を立証するに足るような、彼の生活や仕事や、その他一般の言動を、しばしば目撃してきた。
ここらで、ちょっと、彼の作品にふれる。
処女作「二銭銅貨」では、あの暗号を作り出し、表を使ってあるところに、作家の驚嘆すべく丹念で几帳面で刻明な性格が、まず現れている。他の作品も、彼の特異な怪奇美への憧れで、いとも絢爛たる彩色が施こされてはいるものの、構成の上では、比類のない努力の積み重ねが見られる。私は、「鏡地獄」を彼の最高作の一つだと思うが、球の内面を鏡とした時、中心へ反射されてきた光が、いかなる像を結ぶかということを、自分でも考えに考えぬいてみて、それから物理の本などをも調べてみたことではなかったろうか。