Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
よげん
予言
久生 十蘭
Read 予言 (よげん) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 14,000 characters · 27 screens
安部はスケッチ・ブックを振るったり、床を這ったりして探したが、ない。思えば、あの時、残りの何頁かを、畳んだまま机の上に残してきたような気もする。
船はナポリを出帆したらしく、窓の中で雲が早く流れている。その雲を眼で追っているうちに、もう絶体絶命だという気持が胸に迫ってきた。
石黒の予言には十二月の何日とあった。きょうは二十九日だから、十二月は、あとまだ二日と何時間ある。あの二人が、どんなまずいところを見せつけたって、絶対に逆上しないと決心しても、生の神経を持っているのだから、次第によってはどんな馬鹿をやらかすか知れたものではない。安部は汗をかき、煙草の味もわからなくなるほど屈託していたが、どうでも生の神経が邪魔だというなら、今から二日半の間、見も、聞きも、感じもしないような状態に、自分を置けばよろしかろうと考えをそこへ落着けると、つまらない思いつきが、とほうもない良識のような気がして上機嫌になった。そこで適当にジアールを飲んでおいて、給仕にアブサントを持ってこさせ、茴香とサフランの香に悩みながら、あおりつけあおりつけしているうちに、まもなく混沌となった。