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ふたつのいえをつなぐかいそう

二つの家を繋ぐ回想

宮本 百合子

Read 二つの家を繋ぐ回想 (ふたつのいえをつなぐかいそう) by 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 18,480 characters · 37 screens

Aozora Bunko

性格の異うこと、何と云っても、彼女は芸術家には生れ付いて居ないこと。それ等が実感として彼女の反省にのぼりさえしたら、或程度まで譲歩は出来得よう。自分には、すべき実に多くの感謝がある。美しい調和、いやしい妥協ではなく、真心からとけた協和が生れない訳はないのである。

父と自分との間には、可なり迄、此点はよく行って居る。自分は、父の家庭的位置と云うことにも深い理解と同情とを感じて居る。

それ等のことは、又いつかくわしく書く機会もあろうが、ちっとも苦しめたくない、懐しい父が、彼の顔に憂いを漲らせ、悵然とされると、実にたまらない。どうでもよい。早くやめたい、とさえ思ってしまう。

今も、森とした夜の畳の上に、彼が、一日中疲れた丸い脚をすとんと延し、斜に手をついて

「困ったことじゃあないか、え?――まあ、今夜はおそくもなったから、帰るといい。よく考えなくちゃならんことだ。」

と云われると、自分は言葉に従うほかない。

母は、Aが、「それでも」と彼女の言葉を押して、理解され愛されることを懇願せず、

「それならば仕方がありません。私は、謹んで引下って居ります。私もよく考えますから、どうぞ、おかあさまも、よくお考えになって下さい」