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ふたりのセルヴィヤじん
二人のセルヴィヤ人
辰野 隆
Read 二人のセルヴィヤ人 (ふたりのセルヴィヤじん) by 辰野 隆 (たつのゆたか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 6,804 characters · 14 screens
内地の旅行を了えると間もなく私は更らに国境を越えて、イタリアの旅に数旬を費やした。秋風が吹き初めて、街々の料理店では、牡蠣が旺んに売れる頃、私はそろそろフランスの麺麭が恋しくなって来たので、自由な独り旅をいい加減に切上げて、再びパリに帰って来た。芝居の期節である。音楽の期節である。秋のサロンが始まる。パリは目と耳とを思う存分働かせるに最もふさわしい都らしい都になっていた。私は、昼も夜も、下宿を留守にする日が続いた。従って、エレディヤ研究者の事などは、いつの間にか忘れて了った。
或日、私は買物をして帰って来ると、宿の入口で、主人が私を呼びとめて、面白い話があるという。私は話が面白かったら、之をやるといいながら、焼栗の袋をポケットから出して見せた。
「焼栗には甘口の白葡萄酒がいい。惜しいけれど、一本奮発しようか。」といって彼は地下室に降りて行った。やがて彼はソーテルヌの一壜をぶら下げて出て来ると、サロンの卓の上にそれを置いて、
「へい旦那之が最後の壜で御座います。旦那は御運がいい。」などとレストランの酒番の口真似をした。そして彼は壜の栓を抜いて「先ずあなたにピュスラージュを」