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しつらくえんさつじんじけん
二十世紀鉄仮面
小栗 虫太郎
Read 二十世紀鉄仮面 (しつらくえんさつじんじけん) by 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 38,489 characters · 77 screens
屍体にも外傷は愚か、中毒死らしい徴候さえ、残されていないのである。尚絶命を証明する時刻は、小卓の上に投げた、右手の甲の下で、腕時計の硝子が割れていて、その指針が正二時を指しているだけでも、明らかだった。
「やはり、心臓痲痺ですかな」
屍体を弄っている法水の背後から、杏丸が声をかけた。
「空気栓塞には、猛烈な苦悶が伴いますし、流涎や偏転の形跡もないのですから、脳溢血とも思われませんし……。それに、こんな開放された室内では、有毒瓦斯は用をなさんでしょう」
「そうです。そうあってくれると、実に助かるんですよ」
法水は何故か、反対の見解を匂わせたが、今度は屍体の周囲を調べ始めた。
鍵束は枕の下にそっくりしていて、杏丸の話では、各々の室ごとに鍵の形が異なっているそうであった。が、彼はすぐ寝台から離れて、附近の床上に眼を停めた。
その辺一体に、ひしゃげ乾ばった膀胱みたいなものが、四つ五つ散乱しているのであるが、その一寸程の袋体のものは、杏丸医学士の説明により、俄然注目さるるに至った。
「実は私も不審に思っているのです。これは、幹枝の腹水と一緒に取り出された、膜嚢なんですからね。