Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

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にじゅうしのひとみ

二十四の瞳

壺井 栄

Read 二十四の瞳 (にじゅうしのひとみ) by 壺井 栄 (つぼいさかえ) in Japanese with furigana. JLPT N3. Tap a word for the meaning.

N3 · intermediate · modern kanji and kana · 113,429 characters · 227 screens

Aozora Bunko

「かわいそうに、これ先生がたべるの?」

「うん、約束じゃもん」

「逃がしてやりましょうよ」

「いや、約束じゃもん」

正はうしろをふりむいて「なあ」とみんなのさんせいを求めた。男の子は手をたたいてよろこんだ。

「じゃあこうしましょう。あとで小使さんにこれをにてもらい、今日の理科の時間に研究しようじゃないの。それから、蟹っていう題で綴方も書いてくるの」

「はーい」

「はーい」

大さんせいだった。籠は窓べりの柱の釘にかけられ、その時間中蟹はがさごその音を立てつづけてみんなを笑わせた。

時間がすむと、先生はひょうたん籠をはずし、じぶんで小使室のほうへ歩いていった。小ツルとコトエが用ありげについてきて、

「せんせ」と呼びかけ、ふりむくのをまって、

「マッちゃんのこと」といった。

「マッちゃん?」

「はい。マッちゃん、ゆうべの船で、大阪へいったん」

「ええっ」

思わず立ちどまった先生の顔を見あげながら、コトエが、一生けんめいの顔で、

「しんるいの家へ、子にいったん」

「まあ」

「そいで、マッちゃん家、おっさんと男の子と残ったん」

「そう、マッちゃん、うれしそうだった?」

コトエは答えずに、かぶりをふった。