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にひゃくとおか
二百十日
Read 二百十日 (にひゃくとおか) by Natsume Sōseki (夏目 漱石) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 29,466 characters · 60 screens
「そうさ、さっきは少し晴れそうだったがな。雨や風は大丈夫だが、足は痛むかね」
「痛いさ。登るときは豆が三つばかりだったが、一面になったんだもの」
「晩にね、僕が、煙草の吸殻を飯粒で練って、膏薬を製ってやろう」
「宿へつけば、どうでもなるんだが……」
「あるいてるうちが難義か」
「うん」
「困ったな。――どこか高い所へ登ると、人の通る路が見えるんだがな。――うん、あすこに高い草山が見えるだろう」
「あの右の方かい」
「ああ。あの上へ登ったら、噴火孔が一と眼に見えるに違ない。そうしたら、路が分るよ」
「分るって、あすこへ行くまでに日が暮れてしまうよ」
「待ちたまえちょっと時計を見るから。四時八分だ。まだ暮れやしない。君ここに待っていたまえ。僕がちょっと物見をしてくるから」
「待ってるが、帰りに路が分らなくなると、それこそ大変だぜ。二人離れ離れになっちまうよ」
「大丈夫だ。どうしたって死ぬ気遣はないんだ。どうかしたら大きな声を出して呼ぶよ」
「うん。呼んでくれたまえ」
圭さんは雲と煙の這い廻るなかへ、猛然として進んで行く。碌さんは心細くもただ一人薄のなかに立って、頼みにする友の後姿を見送っている。