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にせんどうか
二銭銅貨
黒島 伝治
Read 二銭銅貨 (にせんどうか) by 黒島 伝治 (くろしまでんじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 3,014 characters · 6 screens
その番もしなければならない。
「牛の番やかいドーナリヤ!」いつになく藤二はいやがった。彼は納屋の軒の柱に独楽の緒をかけ、両手に端を持って引っぱった。
「そんなら雀を追いに来るか。」
「いいや。」
「そんなにキママを云うてどうするんぞいや! 粉はひかにゃならず、稲にゃ雀がたかりよるのに!」母は、けわしい声をだした。
藤二は、柱と綱引きをするように身を反らして緒を引っぱった。暫らくして、小さい声で、
「皆な角力を見に行くのに!」と云った。
「うちらのような貧乏タレにゃ、そんなことはしとれゃせんのじゃ!」
「えゝい。」がっかりしたような声でいって、藤二はなお緒を引っぱった。
「そんなに引っぱったら緒が切れるがな。」
「えゝい。皆のよれ短いんじゃもん!」
「引っぱったって延びせん――そんなことしよったらうしろへころぶぞ!」
「えゝい延びるんじゃ!」
そこへ父が帰って来た。
「藤は、何ぐず/\云よるんぞ!」藤二は睨みつけられた。
「そら見い、叱らりょう。――さあ、牛の番をしよるんじゃぞ!」
母はそれをしおに、こう云いおいて田へ出かけてしまった。
父は、臼の漏斗に小麦を入れ、おとなしい牛が、のそのそ人の顔を見ながら廻っているのを見届けてから出かけた。