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へいけがに

伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集

岡本 綺堂

Read 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 203,094 characters · 411 screens

Aozora Bunko

狼は火を恐れると云うことを聞いているので、わたしは松明をたたき付けて、一生懸命に逃げたのだ。

お妙 その狼の顔が内の姉さんに見えましたか。

昭全 わたしが何で嘘をつくものか。顔も姿もおまえの家の姉さんに相違なかったのだ。

お妙 まあ。

(お妙はやはり不思議そうに考えている。)

源五郎 (おなじく惑うように。)そうは云っても、自分の眼で確な証拠を見届けないうちは、おれも迂闊に手を出すことは出来ない。万一それが間違いであったら、取返しの付かないことになる。なにしろ弥三郎どのと相談の上でなければならないが、亭主にむかってお前の女房が狼らしいとは、なんぼ何でも云い出しにくい。お前からそっと兄さんに話してみては呉れまいかな。

昭全 まだ疑がっているのか。わたしはこの二つの眼で見たというのに……。

源五郎 お前ひとりが見たというのでは、まだ本当の証拠にはならないのだ。(お妙に。)おまえにも何か思い当るようなことは無いかな。

お妙 さあ。(又かんがえる。)そう云えば、このあいだの朝、姉さんが表の井戸端で……。血の付いたような着物の袖を……。

源五郎 血の付いたような着物の袖を……。