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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
Read 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 203,094 characters · 411 screens
雨の音いよいよ烈し。)
翁 雨がだんだんに強くなって来たぞ。
嫗 内も外も暗くなって来た。
娘 風も少し吹き出したとみえて、草や木がざわざわ鳴っています。
青年 怪しい物の出そうな晩ですな。
(人々は顔を見あわせて、ようやく不安の念に襲わる。)
娘 もうやがて鐘がきこえるでしょう。
翁 むむ。
(人々は息をのんで待つ。やがて酉の刻の鐘きこゆ。)
嫗 おお、鐘が鳴った。
青年 鐘が鳴りました。
(鐘の音つづいてきこゆ。娘は思わず母にすがる。嫗は娘を抱きよせて、あたりに眼を配る。翁は入口の門をしかとしめて錠をおろす。)
翁 こうして置けば大丈夫だ。いや、まだ裏口が不安心だ。
(翁はあわてて奥へ走り入る。)
嫗 (声を低める。)蛇はいよいよ来るでしょうか。
青年 来るでしょう。しかし御安心なさい。
嫗 大丈夫でしょうか。
青年 大丈夫です。
(翁は再び奥よりいず。)
翁 もう何処もかしこもすっかり閉めて来たから、大丈夫だ。家には鼠が潜り込むほどの隙間もないぞ。
(雨風の音きこゆ。娘は物におそわれたように叫ぶ。)
娘 あれ、あれ、門に……。
嫗 (怖るおそる門をのぞく。)いや、外は真闇で、雨が降っているばかりだ。