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さくひんのけつみゃく
作品の血脈
宮本 百合子
Read 作品の血脈 (さくひんのけつみゃく) by 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 2,728 characters · 6 screens
も「文学評論」もひっくるめて何となくわかった気がする。漱石の作品の全系列が人と一つのものとして、わかったという気持で映って来る。作品がどれ程巨大であり多量であろうとも、作者の質量そのものの中にあってわかった感じがするものである。作家の資質のよさわるさ、大きさ小ささ、それなりにその人を見ると何かわかるところがある。作品のすきさもわかった気がし、きらいがあるとすれば、それも成程と肯けるものが必ずある。そして、これは決して、文学の専門的な何かを前提とするものではなくて、作家と作品の間にある血液循環、細胞関係の必然の結果であり、人間的な総括的な直感である。この事実は日頃あらゆる人々の経験しているところであると思う。
かの子さんの小説は、かの子さんの曲線、色、厚み、音調、眼の動かしかた、身ごなしすべてをもっているのであるけれども、そこにかの子さんという人が出て来ると、一目でわかったものの代りに、何だか分るのだけれど分らない気がする。あすこだな、と内部的にぴーっと一致する点が見つからないのである。作品が人に溶けず人が作品にとけ出して来ない。かの子さんの色彩強烈な肉体のまわりに色彩強烈な作品が、空間をもって林立してでもいるような感じで、一言話せば作品の世界がじかに触れ開けて来る感じでなくて、何か苦しかったのである。