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しゅぜんじものがたり
修禅寺物語
岡本 綺堂
Read 修禅寺物語 (しゅぜんじものがたり) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 12,737 characters · 26 screens
さりとは大事じゃ。
(遠近にて寝鳥のおどろき起つ声。下田五郎は橋を渡りて出づ。)
五郎 常はさびしき山里の、今宵は何とやらん物さわがしく、事ありげにも覚ゆるぞ。念のために川の上下を一わたり見廻ろうか。
春彦 五郎どのではおわさぬか。
五郎 おお、春彦か。
(春彦は近づきてささやく。)
五郎 や、なんと言う。金窪の参入は……。上様を……。しかと左様か。むむ。
(五郎はあわただしく引っ返しゆかんとする時、橋の上より軍兵一人長巻をたずさえて出で、無言にて撃ってかかる。五郎は抜きあわせて、たちまち斬って捨つ。軍兵数人、上下より走り出で、五郎を押っ取りまく。)
五郎 やあ、春彦。ここはそれがしが受け取った。そちは御座所へ走せ参じて、この趣を注進せい。
春彦 はっ。
(春彦は橋をわたりて走り去る。五郎は左右に敵を引き受けて奮闘す。)
第三場
もとの夜叉王の住家。夜叉王は門にたちて望む。修禅寺にて早鐘を撞く音きこゆ。
(向うより楓は走り出づ。)
かえで 父様。夜討ちじゃ。
夜叉王 おお、むすめ。見て戻ったか。
かえで 敵は誰やらわからぬが、人数はおよそ二三百人、修禅寺の御座所へ夜討ちをかけましたぞ。