Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

いだいなるゆめ

偉大なる夢

江戸川 乱歩

Read 偉大なる夢 (いだいなるゆめ) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 117,988 characters · 234 screens

Aozora Bunko

滝つせは黒髪を乱し、肩をうち、白衣の肌を伝い流れ、弾き飛んで、濛々たる水煙となり、神秘なる乙女の姿を神々しくぼかしていた。

水煙の中に色をうしなった唇はかすかに動き、合掌せる手首は烈しく震えて、彼女は一心不乱に何事かを念じているのである。

新一は乙女心の烈しさにうちひしがれて、晩秋の冷気の中に立ちすくんでいた。長い長い間、身動きもせず、息さえ止まる思いで、その神々しいものを見守っていた。手に汗を握り、涙を流し、憑かれたように立ちつくしていた。

どれほどの時がたったのか、ふと夢がさめたようにわれにかえって見ると、すぐ目の前の林の中に、いつの間に着更えたのか、もんぺ姿の京子の現実の姿があった。

新一は木の枝をかき分けて、その傍へ近づいて行った。京子も物音に気づいて振り返った。

「マア、新一さん、とうとうあなたに見られてしまいましたのね」

京子はまだ青ざめた片頬に、ほのかな微笑を浮かべて、静かにいうのであった。

「毎朝、ここへ来るのですか」

「エエ」

「何を祈るためにです」

「お分りになりませんの」京子は幽かな憤りを見せて、やや烈しく聞き返した。

「分っているような、分っていないような」