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びぜんてんいちぼう
備前天一坊
江見 水蔭
Read 備前天一坊 (びぜんてんいちぼう) by 江見 水蔭 (えみすいいん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 12,511 characters · 25 screens
芝居興行禁制とまで、堅く出ていた人格者。それに秘密の御落胤というのであるから、初めてこの物語が生きるのである。
「なる程、備前岡山は中国での京の都。名もそのままの東山あり。この朝日川が恰度加茂川。京橋が四条の大橋という見立じゃな」
西中島の大川に臨む旅籠屋半田屋九兵衛の奥二階。欄干に凭れて朝日川の水の流れを眺めている若侍の一人が口を切った。
「どうもこうした景色の好い場所に茶屋小屋の無いというは不自由至極。差当りこの家などは宿屋など致さずして、遊女数多召抱えるか、さもなくば料理仕出しの他に酌人ども大勢置いて、大浮かれに人の心を浮かした方が好かりそうなもの」
同伴の色の黒い、これは浪人体のが、それに次いで口を開いた。
「これ、滅多な事を申されな」
それを制止したのは分別あるらしき四十年配の総髪頭。被服から見ても医者という事が知れるのであった。
「かの伊賀越の敵討、その起因は当国で御座った。それやこれやで、鳥取の池田家と、岡山の池田家と御転封に相成り、少将様こちらの御城に御移りから、家中に文武の道を励まされ、諸民に勤倹の法を説かせられて、第一に遊女屋は御禁制じゃ。