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いりむこじゅうまんりょう
入婿十万両
山本 周五郎
Read 入婿十万両 (いりむこじゅうまんりょう) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 10,650 characters · 22 screens
――寒泉先生には如何にしてかこの事実を御承知にて、浅二郎を選んだものと存じまする」
「うーむ」
初めて分った十万両の出所。――さすがに寒泉の眼識は高かった、浅二郎なればこそ家譜の中からこの記録を発見し、生家に十万両呈出をうんと云わせる事ができたのである――
「申上げます」
若侍が襖際へ来て平伏した。
「御老職まで、即刻お渡し申上げるよう、矢走浅二郎殿より御書面にござります」
「浅二郎が書面――?」
訝りながら披いて見た靱負が、
「おお――」
と云って顔をあげた、「殿、浅二郎め、永のお暇願いを差出してございます」
「――どうした事じゃ」
「理由は申しておらず、このまま退国するとのことにござります」
「いかん、ただちに使者をやって止めろ」
高信は驚いて云った、「暇はやらぬ、予が申したと早く伝えよ」
「はは」
靱負は倉皇として起った。
その頃――。家へ帰った浅二郎は、事の始終を手短かに源兵衛へ報告すると、容を改めて、
「これにてお召出しに与りましたお役目、どうやら無事に果しましてござりますが、就ては舅上に改めてお願いがござります」
「よいとも、何なりと望め」
源兵衛はほくほくもので、「その方ほどの婿を持って家中への面目、わしにできる事なれば何でも協えてやるぞ」