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きかくとさんぞくととのさま
其角と山賊と殿様
山本 周五郎
Read 其角と山賊と殿様 (きかくとさんぞくととのさま) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 4,948 characters · 10 screens
「ふふふふ大分強そうな口を利くな、如何にも御用だ、気の毒だがここへ通り合せたのが貴様の不運、身ぐるみ脱いで置いて行け」
「文句を吐かせば遠慮なく斬って棄てるぞ、早く裸になれ!」
一人が白刃で其角の頬をぴたぴたと叩く、其角すっかり毒気をぬかれたが、
「冗談おっしゃってはいけません、私は御覧の通りの貧乏俳諧師、逆さにふるったって鐚一文ありゃしません、この襤褸を身ぐるみ脱いだところで――」
「ええ、ぐずぐず申すか!」
気早な一人が、いきなり其角の胸倉を取って、刃をどきどきする喉元へ突つけた。
「網にかかった獲物なら、大名乞食の差別はない、尾羽根までるが我等の掟だ、脱がぬとあればおのれ――!」
「お、お待ちください、脱ぎます」
すっかり酔の醒めた其角は、手早く帯を解いて着物を脱いだ。
「何だ、未だ残っているではないか」
「これは襦袢です!」
「いかん、そいつも脱げ」
褌ひとつになった其角、浅春とはいえ二月の内、川から来る風はまだ素肌には冷たかった。さすがに其角中っ腹になって、
「こんな姿では歩いて家へは帰れません、何とかして頂かなければ困ります」
「よしよし、良い工夫をしてやる」