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にとせろうじん
再度生老人
佐左木 俊郎
Read 再度生老人 (にとせろうじん) by 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 6,770 characters · 14 screens
それなのに老人は、汚れた縞の袷から、垢染みたシャツの袖を覗かせて、寒さに顫えていた。そしてその老人は、お伽噺の中にでも出て来る老人のように、長い白い頤髯を持っていた。頭はつるつるに禿げあがっていた。
私達は五六人で、本の頁にはさむ公孫樹の葉を拾っていたのだが、みんな不思議そうな、訝かる眼で、どこからか風に吹きとばされて来たように、突然私達の側へ寄って来たこの上品な容貌の老人を見た。
「この寺には、和尚さんはいるのかな。」
老人は私に訊いた。眼が怖ろしいほどぎらぎらと光っていた。
「おります。」
こう言って、私はおそるおそる老人の顔を見た。老人は、何か長い丸いものを風呂敷に包んで、鉄砲を担ったような具合に、細い紐で背負っていた。
他の子供達が、私の側へ駈け寄って来た。老人は、ちょっと首を曲げたようであったが、すぐに庫裡の方へと立ち去った。私達はその後から、ぞろぞろとついて行った。
「お頼ん申す。」
老人はこう言って庫裡の入り口を開けた。この、「お頼ん申す」という言葉は、私達にとっては、非常に珍しいものであった。おそらく私達には、初耳であった。講談かお伽噺に出て来る人でなければ、この辺では、そういう言葉を使う人はなかった。