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かんこんそうさいはかせ
冠婚葬祭博士
佐々木 邦
Read 冠婚葬祭博士 (かんこんそうさいはかせ) by 佐々木 邦 (ささきくに) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 14,762 characters · 30 screens
「先輩があれじゃ心細い。人間、何処かもっとガッシリしたところが欲しい」
と僕は感じたまゝを大谷君に話した。
「いや、団さんは悟り切っているから、あゝいう風に見えるんだ。今に分るよ」
「君は仲人をして貰ったから、贔負目があるんだ。本当のところは高等幇間の部類さ」
「何うして/\。骨があるんだ」
と大谷君は力強く主張した。
僕は間もなく団さんを見直した。それは忘年会の席上だった。その折、吉例によって、専務の毛利さんと取締の八田さんが余興をやる。毛利さんは義太夫で、八田さんは謡曲だ。皆迷惑だけれど、相手が重役だから、長いものに巻かれて謹聴する。
「一つ諸賢のお耳を汚そうかな?」
と毛利さんが頃合を計らって周囲を見廻した。無礼講だというので、僕は毛利さんの隣りに坐っていた。
「君、義太夫を語るなら祝儀を出し給え」
と団さんが言った。重役でも君僕で行くには一寸驚いた。
「祝儀? 貰っても宜いね。玄人を呼べば、三十円包むところだ。特別をもって、二十円に負けてやる」
「取る気かい? 君が」
「当り前さ」
「心臓が鞣革で出来ているんだね。しかし僕が幹事を勤めているからには、もう只じゃ義太夫も謡曲も唸らせない」