Japanese reading practice

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べっぷおんせん

別府温泉

高浜 虚子

Read 別府温泉 (べっぷおんせん) by 高浜 虚子 (たかはまきょし) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 13,339 characters · 27 screens

Aozora Bunko

さすがに白熱の太陽が大空に君臨している間は、左右の島も汪洋たる波も、その熱に焼きただらされて、吹き来る風もどことなく生暖かい。その風は裳裾や袂を翻し、甲板の日蔽をあおち、人語を吹き飛ばして少しも暑熱を感じささないのであるが、それでも膚に何となく暖かい。

太陽が小豆島の頂きに沈みかける時が来ると、やがてこの船の極楽境が現出するのである。今まで青黒く見えておった島々が薄紫に変って来る。日に光り輝いておった海原に一抹の墨を加えて来る。日が小豆島の向うに落ちたと思うと、あらぬ方の空の獅子雲が真赤に日にやけているのを見る。天地が何となく沈んで落着いて来る。と、その海の上を吹いて来る風が、底の方から一脈の冷気を誘うて来る。その冷気が膚に快よい。

暮色が殆ど海原を蔽い隠す頃になると、小豆島の灯台が大きくまたたきそめて、左手には屋島の大きな形が見えそめて来る。もう高松に着くのに間がないことを思わしめる。

後甲板に活動写真をしているのを見に行く、写真のうつる布が風に吹かれているので、映写は始終中はためきどおしである。

高松の埠頭に着く頃はもう全く日が暮れている。