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ぜんきてんまやけ

前記天満焼

国枝 史郎

Read 前記天満焼 (ぜんきてんまやけ) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 48,568 characters · 98 screens

Aozora Bunko

不頼漢の頭、賭博宿の主人、どうやらそんな塩梅らしい。……何だか気味が悪いねえ、どれソロソロ帰るとしよう」

ひょいと立ち上ったが考えた。

「何も好奇、屋敷の様子を、こっそり探ってみてやろう。うまく賭博場でも目つかったら、とんだ面白いことになる」

それで、ソロリと襖を開けた。

8

一つの部屋で、一人の若者が、匕首などを振り廻し、大声で喚きちらしていた。

「なんだなんだ飛んでもねえ奴等だ! うまうま俺を瞞しゃアがった。これで解った、これで解った! 幾度勝負を争っても、一度も勝ったためしがねえ、おかしいおかしいと思ったが、こんな仕掛けのある以上、負けつづけるのは当然だ! ……飛んでもねえ奴等だ、承知出来ねえ! ……さあ叩っ斬るぞ叩っ斬るぞ!」

年の頃は二十一二、非常に上品な若者である。否々むしろ坊ちゃんなのである。色が白く血色がよい。栄養の行き渡っている証拠である。丸味を帯びた細い眉、切長で涼しくて軟らか味のある眼、少し間延びをしているほど、長くて細くて高い鼻、ただし鬘だけは刷毛先を散らし、豪勢侠に作ってはいるが、それがちっとも似合わない。着ている物も立派であって、腰につけている煙草入の、根締の珊瑚は古渡りらしく、これ一つだけで数十金はしよう。