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けんきょう
剣侠
国枝 史郎
Read 剣侠 (けんきょう) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,961 characters · 310 screens
「なかなか以って、そうはいかぬ。……一年前に上州間庭、樋口十郎左衛門殿の道場において、偶然彼と逢いましてな、懇望されて立合いましたが……」
「勝負は?」
「相打ち」
「…………」
「見事に足を。……」
「足を?」
「さよう。払われました」
「…………」
「拙者は面を取りましたが」
浪之助は黙ってしまった。
当代剣豪十人を選んで、日本の代表的人物としたら、当然その中に入るべき人物、秋山要介正勝ほどの人が、相打ちになったというからは、彼水品陣十郎という男、伎倆は伍格と見なければならない。
(そんなに出来る男なのかなア)
嘘のように思われてならなかった。
5
用意して置いた酒肴を出した。
「はじめて参ったのにこのご歓待、要介少なからず恐縮に存ずる」
こう云いながらも遠慮せず、悠々と盃を重ねる態度が、明朗であり闊達であり、先輩も後輩も無視していて、真に磊落であり洒落であって、しかも本来が五百石取りの、先は大身の家柄の、御曹司である品位は落とさず、浪之助には慕わしくてならなかった。
「陣十郎のその悪剣、何と申す名称でござりますか?」
浪之助はそう訊いて見た。
「逆の車と申しておりましたよ。