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うごくえとあたらしきむげん
動く絵と新しき夢幻
小川 未明
Read 動く絵と新しき夢幻 (うごくえとあたらしきむげん) by 小川 未明 (おがわみめい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 1,724 characters · 4 screens
それには無論強烈な色彩を以てしなければならないと思う。
丁度、絵画に於ける色彩派が使うような色で描き現わすのである。よしんば、その色は彼のモネーなぞの使った眼を奪うような赤とか、紫とか、青とかあらゆる光線に反射するようなぎらぎらした眼の廻るような色彩のみでなくとも、極く単調な灰色とか、或は黒や白であっても此の気持は出せると思う。
明るい方面でなくて、暗い方面も絵画的に出せるのである。即ち印象的の描写と云うものは、必ずしも色彩の複雑なるを要しないのである。よし単調な色彩であっても、そこに一種云うべからざる魅力と、奪うべからざる力を描出し得ると思う。この事はいつか詳しく云いたいと思っている。
僕は批評と云わず、作と云わず、セルフのないものは充らないと思う。只単に旨いと思って読むものと、心の底から感動させられるものとは自らそこに非常な相違があると思う。
読んで見て、如何にも気持がよく出て居て、巧みに描き出してあると思う作品は沢山あるけれども、粛然として覚えず襟を正し、寂しみを感じさせるような作品は極めて少ないように思う。
併し古い例であるが、故独歩の作品中のある物の如きは、読んでいると、如何にも作者自身が自然に対して思った孤独と云った感じが、一種云い難い力を以て読者の胸に迫るのを感ずる。