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かちうんまけうん
勝ち運負け運
佐々木 邦
Read 勝ち運負け運 (かちうんまけうん) by 佐々木 邦 (ささきくに) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 119,262 characters · 243 screens
「口の達者な奴だな」
と僕は立ち上った。
「あなた」
「何だい」
「お気をつけ下さいよ。英一は何でも見ているんですから」
と妻が好い切っかけにして思い知らせた。
「よし/\」
「商売上のお打ち合せなら何処へお出になるのも御自由でしょうが、梯子段から逆さまにお落ちになると、お頭が破れますよ」
「然う度々は落ちないよ」
「余りお過しにならないようにして戴きます」
「よし/\」
「お父さん、返辞ばかりじゃ駄目ですよ」
と英一が又やった。女房と忰の挾撃だ。こうなると、僕も甚だ値打がないようだけれど、この英一が偶僕の天稟を証明してくれる。まだ六つだけれど、実に鋭い。目から鼻へ抜ける。僕の子供の時によく似ていると両親が言っている。それを僕が大いに主張したら、妻は、
「心細いお話ね、子供に似ているのが御自慢なんて」
と貶しつけた。よく/\僕を見括っている。そこで今度の小説は女房に対して雪辱戦という心持も手伝っている。家の主人には斯ういう芸があったのかと驚かしてやりたい。内容を読んで見ると、為人も自然分って来るという仕組である。
船頭松右衛門実は樋口の次郎兼光、斯ういうのが昔の芝居によく出て来る。