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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

Read 勝ち運負け運 (かちうんまけうん) by 佐々木 邦 (ささきくに) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 119,262 characters · 243 screens

Aozora Bunko

勝とうって気もないんだ。ただ負けなければ宜い」

「成程ね。僕も勝とうって気はない。親の教育が徹底しているんだね、これは。ただ負けなければ宜いと思っている」

「しかし矢っ張り一種の競争だ」

「その競争を小説に書くんだよ。今までのところを」

「ふうむ。それで二人の自叙伝だと言ったんだね」

「然うさ。異存ばしあるまいな?」

「君の方が勝つところばかり書いちゃ困るよ」

「そこは怨みっこのないようにする」

「恋愛問題も書くのかい?」

「無論さ。味のないアイスクリームは拵えない」

「馬鹿なことを書き立てられると、僕は妻に胸倉を取られる」

「ハッハヽヽ。本音を吹いたね」

「然るべく加減してくれよ」

「現実暴露さ。どうせ折紙がついているんだから、凡人としての二人の生活をそのまゝ書く分には別に苦情も出まい」

「兎に角、僕の自叙伝が入るなら、僕は条件をつける。発表前に検閲させて貰う」

「見せる丈けは見せてやる」

「これは僕も一つ書くかな。負けちゃいられない」

「久子さんに手伝って貰い給え」

「馬鹿にするなよ」

と菊太郎君はもう競争意識を動かしていた。しかし小説は逆立ちをしても書けまい。文筆の才は絶無だ。