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さんじゃくかく
化鳥・三尺角 他六篇
泉 鏡花
Read 化鳥・三尺角 他六篇 (さんじゃくかく) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 13,536 characters · 27 screens
歩行にも内端で、俯向き勝で、豆腐屋も、八百屋も黙って通る。風俗も派手でない、女の好も濃厚ではない、髪の飾も赤いものは少なく、皆心するともなく、風土の喪に服して居るのであろう。
元来岸の柳の根は、家々の根太よりも高いのであるから、破風の上で、切々に、蛙が鳴くのも、欄干の壊れた、板のはなればなれな、杭の抜けた三角形の橋の上に蘆が茂って、虫がすだくのも、船虫が群がって往来を駆けまわるのも、工場の煙突の烟が遥かに見えるのも、洲崎へ通う車の音がかたまって響くのも、二日おき三日置きに思出したように巡査が入るのも、けたたましく郵便脚夫が走込むのも、烏が鳴くのも、皆何となく土地の末路を示す、滅亡の兆であるらしい。
けれども、滅びるといって、敢てこの部落が無くなるという意味ではない、衰えるという意味ではない、人と家とは栄えるので、進歩するので、繁昌するので、やがてその電柱は真直になり、鋼線は張を持ち、橋がペンキ塗になって、黒塀が煉瓦に換ると、蛙、船虫、そんなものは、不残石灰で殺されよう。即ち人と家とは、栄えるので、恁る景色の俤がなくなろうとする、その末路を示して、滅亡の兆を表わすので、詮ずるに、蛇は進んで衣を脱ぎ、蝉は栄えて殻を棄てる、人と家とが、皆他の光栄あり、便利あり、利益ある方面に向って脱出した跡には、この地のかかる