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じゅうにしこう
十二支考(上)〔全2冊〕
南方 熊楠
Read 十二支考(上)〔全2冊〕 (じゅうにしこう) by 南方 熊楠 (みなかたくまぐす) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 290,735 characters · 566 screens
上述北国の水蛇は評判だけでも現存するや。諸君の高教を冀う。柳田君の『山島民譚集』に、河童の類語を夥しく蒐めたが、水蛇については一言も為れ居ぬ。本篇の発端にも述べ懸けた通り、支那の竜蛟蜃など、蛇やや大蜥蜴に基づいて出来た怪動物が常に河湖淵泉の主たり。時に人を魅し子を孕ます。日本の『霊異記』や『今昔物語』に、蛇女に婬して姙ませし話や、地方に伝うる河童が人の妻娘に通じて子を産ませた談が能く似て居る。
また河童が馬を困しむる由諸方で言う。支那でも蛟が馬を害した譚が多く、『雅』にその俗称馬絆とあるは、馬を絆ぎ留めて行かしめぬてふ義であろう。『酉陽雑俎』十五に、〈白将軍は、常に曲江において馬を洗う、馬たちまち跳り出で驚き走る、前足に物あり、色白く衣帯のごとし、繞数匝、遽にこれを解かしむ、血流数升、白これを異み、ついに紙帖中に封じ、衣箱内に蔵す、一日客を送りて※(「さんずい+顏のへん」の「彡」に代えて「生」、第4水準2-79-11)水に至る、出して諸客に示す、客曰く、盍ぞ水を以てこれを試さざる、白鞭を以て地を築いて竅と成す、虫を中に置き、その上に沃盥す、少頃虫蠕々長きがごとし、竅中泉湧き、倏忽自ずから盤る、一席のごとく黒気あり香煙のごとし、ただちに簷外に出で、衆懼れて曰く必ず竜なり、ついに急ぎ帰り、いまだ数里ならずし