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じゅうにしこう
十二支考(上)〔全2冊〕
南方 熊楠
Read 十二支考(上)〔全2冊〕 (じゅうにしこう) by 南方 熊楠 (みなかたくまぐす) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 290,735 characters · 566 screens
およそ媚薬はもと医術と魔法が分立せぬ時、半ば学理半ば迷想に由りて盛んに行われたもので(今日とてもこの類の物が薬餌香飾等と混じて盛んに行わるるは、内外新紙の広告で知れる)、形状作用の相似た物は相互その力を相及ぼすてふ同感の見に基づく。
国文の典型たる『土佐日記』に、筆者貫之朝臣の一行が土佐を出てより海上の斎忌厳しく慎みおりしに、日数経てやっと室津に着き、「女これかれ浴みなどせむとて、あたりの宜しき所に下りて往く云々、何の葦影に託けて、ほやのつまのいずし、すしあはびをぞ、心にもあらぬ脛にあげて見せける」。この文を従前難解としたが、谷川士清の『鋸屑譚』に始めてこれを釈いた。ホヤは仙台等の海に多く、科学上魚類に近い物ながら、外見海参に酷似す。イズシは貽貝の鮓で、南部の方言ヒメガイ(『松屋筆記』百五巻)、またニタガイ(『本草啓蒙』四二)、漢名東海夫人、皆その形に因った名で、鰒を同様に見立つる事、喜多村信節の『庭雑録』にも見える。次に岸本由豆流が件の文の「何の葦影に託けて」の何は河の誤写と発明したので、いよいよ意味が明らかになった。全く貫之朝臣が男もすなる日記てふ物を女もして見せるとて、始終女の心になりて可笑味を叙べたもの故、ここも水渉るため脛高く掲げしかば、心にもあらで、ホヤの妻ともいうべき貽貝や鰒様の姿を、葦の