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じゅうにしこう
十二支考(上)〔全2冊〕
南方 熊楠
Read 十二支考(上)〔全2冊〕 (じゅうにしこう) by 南方 熊楠 (みなかたくまぐす) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 290,735 characters · 566 screens
い退いた後、ゆっくり隠し置いた物を取り出し食うなど狡智百出す、故に仏教またアラビア譚等多くその詐多きを述べ、『聖書』に狐の奸猾を言えるも実は野干だろうと言う、したがって支那日本に行わるる狐の譚中には野干の伝説を多分雑え入れた事と想う、『今昔物語』に仏経の野干を狐とした例芳賀博士の攷証本に明示されいる、その四四九頁に『経律異相』から引いて〈過去世、雪山下に近く師子王あり、五百師子の主と作りたり、後時老いて病痩眼闇、諸師子前にありて、空井中に堕つ。五百師子皆捨離し去る、爾時一野干あり、師子王を見てこの念を作して言う、我この林に住み安楽し肉に飽満するを得る所以は師子王に由る、今急処に堕ちたり、いかに報ずべき、時にこの井辺に渠水流あり、野干すなわち口脚を以て水を通ず、水入って井に満ち師子浮み出づ、仏いわく師子王は我身是なり、五百師子は諸比丘是なり、野干は阿難是なりと〉。ここに野干が師子に恩を受けたとせるには訳ある事でこの物毎に師子や虎を追蹤りその残食を享けるのだ、バルフォールの『印度事彙』に夜分コレバルー咆うる所必ず虎あり、コレバルーとは野干年老い痩せ衰えてその群より擯出され自ら餌を捉うる能わず、虎に随うて群を放れて牛などを探索して報せ虎これを殺し食うを俟ってその残を食うものをいう。