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じゅうにしこう
十二支考(上)〔全2冊〕
南方 熊楠
Read 十二支考(上)〔全2冊〕 (じゅうにしこう) by 南方 熊楠 (みなかたくまぐす) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 290,735 characters · 566 screens
開明を以て誇る英米人が兄弟をブラザー姉妹をシスターと言うて、兄と弟、姉と妹をそれぞれ手軽く言い顕す語がないのでアフリカ行の宣教師が聖書を講ずる際、某人は某人のブラザーだと説くと、黒人がそれは兄か弟かと問い返し返答に毎々困るというが(ラッツェル『人類史』二)、予もイタリア書に甥も孫もニポテとあるを見るごとにどっちか分らず大いに面喫う事である。
『本草』に虎が狗を食えば酔う狗は虎の酒だ、また虎は羊の角を焼いた煙を忌みその臭を悪んで逃げ去る、また人や諸獣に勝つが蝟に制せらるとある。佐藤成裕の『中陵漫録』二に虎狗を好み狗赤小豆を好み猫天蓼を好み狐焼鼠を好み猩桃を好み鼠蕎麦を好み雉子胡麻を好み、虎狗を食して淫を起し狗赤小豆を食して百疾を癒し猫天蓼をうてしきりに接る、狐焼鼠を見て命を失う猩桃を得て空に擲つ、鼠蕎麦に就いて去る事を知らず、雉子胡麻を食して毎朝来ると見ゆ。皆まで嘘でなかろう、虎が蝟に制せらるるは昨今聞かぬが豪猪を搏つとてその刺に犯され致命傷を受くる事は近年も聞くところだ。『物類相感志』に虎が人を食うごとに耳上に欠痕もしくは割裂を生ずる、その数を験して何人食ったと判るとある。