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じゅうにしこう
十二支考(下)〔全2冊〕
南方 熊楠
Read 十二支考(下)〔全2冊〕 (じゅうにしこう) by 南方 熊楠 (みなかたくまぐす) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 251,906 characters · 495 screens
主人数十人を将い、往き掘りてその金を得、引き返して穀賊の前へ叩頭し、何とか報恩供養したいから拙宅へ二度入りをと白すと、穀賊、さてこそと言わぬばかりに答うらく、前に君の穀を食いながら姓字を語らなんだは、君にこの金を得せしめて報いたかったからだ。今既に事済んだ上は転じて福を天下に行うべし、住まる事罷りならずと言い終って忽然見えずなったとある。『阿育王譬喩経』には大長者が窖に穀千斛を蔵し、後これを出すに穀はなくて三歳ばかりの一小児あり、言語せぬ故何やら分らず。大道辺に置いて行人に尋ぬれど識る者なし。しかるところ、黄色の衣を着、黄牛に車を牽かせて乗り、従者ことごとく黄色な人が通り掛かり、小児を見るとすなわち穀賊何故ここに坐し居るかと問うた。この小児は五穀の神で、長者に向い、今往ったのは金の神だ、彼が往った方へ二百歩往かば朽木の下に十斛の金を盛った甕がある、それを掘り取ってわが君の穀を食った分を棒引きに願うと、教えの任にその所を掘って大金を獲、大いに富んだとして居る。
五穀の神といえば欧州にも穀精てふ俗信今も多少残存する。ドイツのマンハールト夥しく材料を集めて研究した所に拠れば、穀物の命は穀物と別に存し、時として或る動物、時として男、もしくは女、また小児の形を現わすというのが穀精の信念だ。