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じゅうにしこう
十二支考(下)〔全2冊〕
南方 熊楠
Read 十二支考(下)〔全2冊〕 (じゅうにしこう) by 南方 熊楠 (みなかたくまぐす) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 251,906 characters · 495 screens
永正三丙寅と承安元辛卯、いずれも弥勒元年とするもその十年は乙亥か庚子で辰の歳じゃない。『慶長見聞集』の発端に見えしは、今三浦の山里に年よりへたる知人あり、当年の春江戸見物とて来りぬ。愚老に逢いて語りけるは、さてさて目出たき御代かな、我ごとき土民までも安楽に栄え美々しき事どもを見きく事のありがたさよ、今が弥勒の世なるべしという。実に実に土民のいい出せる詞なれども、全く私言にあるべからずと記せるなど考え出すと、昔は本邦でも弥勒の平等無差別世界を冀う事深く、下層民にまで浸潤し、結構な豊年を祝い、もしくは難渋な荒歳を厭うことは、一度ならず私に弥勒と年号を建てたらしく、例の足利氏の代に多く起った徳政一揆などの徒が、支那朝鮮同様弥勒仏の名を仮って乱を作せし事もあったのだろう。二月十六日の『大毎』紙に、綾部の大本に五六七殿というがあるそうで、五六七をミロクと訓ませあった。かつて故老より亀の甲は必ず十三片より成り、九と四と合せば十三故、鼈甲で作る櫛を九四といい始めたと承ったが、江戸で唐櫛屋を二十三屋と呼んだは十九四の三数を和すれば二十三となるからという(『一話一言』