Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
オチフルイかいじゅうろうてがらばなし
十二神貝十郎手柄話
国枝 史郎
Read 十二神貝十郎手柄話 (オチフルイかいじゅうろうてがらばなし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 127,035 characters · 254 screens
……豊ちゃんと俺らとのいい目がさ」
「そうとも」と女の声が云った。愛を含んだ声であった。
「そうとも二人のいい目がねえ。……妾アお前さんが可愛くてならない」
それっきり、声は絶えてしまった。
(オーヤ、オーヤ)と貝十郎は思った。(ここでも媾曳が行われている。悪党同士の媾曳だ。鏡太郎とそうしてお豊とらしい)(悪くないな)としかし思った。(罪悪のあるらしい旧家の裏庭で、美貌の若者と美貌の女とが、月光に浸りながら媾曳をしている。詩じゃアないか! 詩じゃアないか! そいつを与力が立ち聞きしている。詩じゃアないか! 詩じゃアないか! ……厭だよ、こんないい光景を「御用だ!」などという野暮な声を出して、あったらぶち壊してしまうのは。……こっそり逃げて帰ってやろう)
酔がさせる業であった。与力の方から逃げ出したのである。
彼は家へははいらなかった。庭を巡ってどこまでも歩いた。
宏大な建物を囲繞して、林のようにこんもりと、植え込みが茂っている庭であり、諸所に築山や泉水や、石橋などが出来ており、隔ての生垣には枝折戸などがあったが、鍵などはかかってはいなかった。幾個かの別棟の建物があり、厩舎らしい建物も、物置きらしい建物も、沢山の夫婦者の作男達のための、長屋らしい建物もあった。